「端的に言えば、既に導入されている中国製ドローンを置き換えたい。でも、国産で適当なものがないから、米中分離でセキュリティーに対する懸念が高まっているこの機会に開発しようということ。そうすれば産業振興にもつながる」。先ごろ動き出した政府主導の開発プロジェクトの狙いを、ある国内ドローンメーカーのトップはこう説明する。
中国製ドローンが世界シェア約70%を誇ると言われています
アメリカでは、組織内でのドローンの使用を2020年も引き続き停止すると発表。2019年はドローンを悪用したサイバー攻撃やテロ攻撃などが目立つ年でもあったことから、海外製ドローンに対するセキュリティ上の懸念が関係しています。
国産ドローンを積極的に開発し、導入していく
日本でも始まりました。今回のプロジェクトとは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「安全安心なドローン基盤技術開発」だ。NEDOは2020年1月27日に公募を開始し、4月27日に実施企業5社を公表した。プロジェクトは「委託事業」と「助成事業」に分かれており、前者は自律制御システム研究所(ACSL)、ヤマハ発動機、NTTドコモが、後者はACSL、ヤマハ発動機、ザクティ(大阪市)、先端力学シミュレーション研究所(埼玉県和光市)が担う。
プロジェクトの目標
プロジェクトの目標は、災害対応、インフラの点検、監視・捜索などの政府調達をはじめとする案件に使える、安全性や信頼性を確保したドローンの標準機体、並びに機体を制御する“心臓部”であるフライトコントローラーの標準基盤を設計・開発することだ。機体は自律制御で飛行する「マルチコプター型」になる。さらにドローン機体の量産化や主要部品の高性能化を支援することで、日本のドローン産業の競争力を強化するとしている。
開発スピードが速い中国勢に対抗するため、NEDOとしては異例の“速攻”プロジェクトだ。事業期間は2021年2月までと短く、2021年内の市場投入を目指すという。開発費として、2019年度の政府補正予算16億円を充てる。
国産ドローンの普及に向けた支援
日本政府は、国産ドローンの普及に向けた支援を拡大することを発表。国内での製品開発を後押しするために、資金調達を優遇する法案を2020年2月に国会へ提出するなど、インフラ点検や災害対策の政府調達を広げる見通しです。
国内でも海上保安庁が2020年から中国製ドローンの購入や活用を保留する方針を固めました。報道によれば海上保安庁は機密情報漏洩の危険性を遮断するために、来年度予算案に中国製ドローンを他国製品に転換するための費用を反映する見通しです。
このニュースを受け、国内でドローンの開発や販売を行うドローンメーカーの株価が急上昇しています。救難現場の撮影や警戒監視に活用している数十機のドローンを他機種に切り替えるという政府の発表は、国内メーカーにとって大きなチャンスになりそうです。
また政府は、質の高い国産ドローン開発を後押しするために、情報面の安全性などを要件に資金調達を優遇する法案を2月にも国会に提出する見通しです。インフラ点検や災害対策など政府調達も広げていき、国産ドローンを使用した新サービス育成を進めていくとのことです。