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映像化が不可能と言われている2900万部突破のベストセラーSFミステリー小説「三体」、日本でも大人気に

中国で驚異的なベストセラーとなり、世界各国で19言語に翻訳され、シリーズ三部作累計2100万部超、全世界で2900万部との驚異の記録を残した中国SF長編ミステリー小説『三体』。日本語版が10万部(電子書籍を含む)を突破し、日本列島に“三体ブーム”を巻き起こしています。

SFミステリー小説「三体」

各国のセレブレティが絶賛のレビューを投稿

バラク・オバマ前大統領をはじめ、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ、ジェームズ・キャメロン監督も絶賛しています。「とにかくスケールが大きくて読むのが楽しい」(オバマ)、「二時間の映画では『三体』の世界観を表現しきれない」(キャメロン)など、激賞に継ぐ激賞!

発売実績

『三体』は、2006年から中国のSF雑誌《科幻世界》に連載され、2008年に単行本として刊行された作品です。本が出るやいなや、人気が爆発。なんと《三体》三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)で2100万部以上を売り上げました。中国のみならず世界的にも評価され、2014年には英訳版が刊行。英訳版はこれまでに100万部以上、全世界では800万部以上を売り上げています。日本語版は2019年7月4日に早川書房より発売されています。

メディア

2018年3月、Amazonが10億ドルを投じて『三体』のドラマ制作を目指しているという報道がなされました。また、ドラマ化が中国で決定との報も。そして昨日には中国の大手動画共有サービス bilibili (ビリビリ/哔哩哔哩)で全24話のアニメになるという報道が。
著者の劉慈欣は、原作短篇「さまよえる地球」が『流転の地球』として映画化、中国国内では初週の成績としては史上最高を記録、全世界での興行収入が760億円に達したとの報が。今、もっとも注目すべき作家なのです。

壮大なスケール

あまりにも壮大なスケールの為、映像化が何度も持ち上がっては頓挫してきた「三体」。読んでもわからない、途中で人物関係が分からなくなる、ところもあるのですが、著者の劉氏が1963年の中国の小村に生まれたとあって、文革期の内戦、空腹、中国初の人工衛星、洪水…等々少年時代の実体験に基づく記述もちりばめられ、なかなかなに読ませるSFとなっております。

『三体』のあらすじ

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた……というのが『三体』のあらすじ。文潔が味わった絶望こそが、この物語のすべての始まりだったのです。とにかくスケールが大きく、先が気になってページをめくる手が止まりません。

宇宙に向けて発信した電波は、惑星「三体」の異星人に届き、数十年後、科学的にありえない怪現象が人類を襲う。壮大な「三体」三部作の第1弾。
数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。
その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。
そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

普通のエンジニアが中国SF文学界の革命をもたらす

『三体』の著者である劉慈欣は、1963年中国・山西省陽泉生まれ。ファンやメディアは親しみを込めて、「大劉(劉アニキ)」と呼ぶ。1985年に河南省鄭州市にある華北水利水田大学を卒業後、地元・山西省の娘子関発電所でエンジニアとして働きながら、余暇を利用してSF 小説を執筆し始める。1999年に雑誌『科幻世界(SFワールド)』に初めて作品が掲載され、その後も多数の短編・中編小説を発表してきたが、読者からの「ぜひ長編を!」という強い要望に応え、長編執筆に取り組む決意をする。

2006年5月、『科幻世界』で『三体』の連載がスタート。連載は12月に終了するも、2008年に単行本として刊行されると、人気が爆発。著者は当初、『三体』を短編小説として発表する予定だったが、文革を背景に人類と惑星との接触を描いた中国SF作家・呉岩(ウー・イエン)の長編児童小説『中国軌道号』の影響を受けたことが構想に一大変化をもたらしたと話している。かくして『三体』は、三部作の長編シリーズとして世に送り出される。「三体」三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)は2100万部を超す売り上げを記録している。中国のみならず世界的にも評価され、2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が行刊。2015年、翻訳書として、またアジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。ヒューゴー賞受賞作には、カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』やウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』などがあります。これを、翻訳書として、またアジア人作家として初めて受賞したのです。また、原作短篇「さまよえる地球」が『流転の地球』として映画化、春節中の中国での興行収入が3億ドル(約330億円)に達したと報じられた。今もっとも注目すべき作家のひとりである。

30年以上にわたりエンジニアとして勤務し続けた劉慈欣は、インタビューでことあるごとに「『三体』を除けば、私はただのエンジニアだ」と言い続けてきた。自分こそが大のSFファンであり、幼少時にジュール・ヴェルヌの『地底旅行』を手にして以来、各国のSF小説を読み耽ったと語っている。「安定した仕事と収入があったからこそ、小説を書くことができた」と言い、仕事に過剰なストレスがなかったことが自由な発想を生んだと述懐している。90年代当時はSF=幼稚、子ども向けとみなされていたことから、デビュー後もSF小説を執筆している事実を外部に漏らすことなく、淡々と日々を送っていた。ある時、同僚が「お前と同姓同名の作家がいるらしいな」と声をかけてきたが、同一人物だとは気づかれなかったというエピソードもある。だが、『三体』の誕生は著者の人生を変えるだけでなく、中国の文学界をも揺るがすことになる。

ドラマ版、映画版が次々に頓挫…もはや映像化は不可能!?

今回、ようやくオンライン漫画版のリリースが決定した『三体』だが、もちろんこれまでにマルチメディア化の話がなかったわけではない。実は『三体』の実写映像化は、ことごとく壁にぶつかっているのだ。

2015年、中国湖南衛星テレビは全32話によるテレビドラマ版『三体』の制作を発表した。監督も決定し(キャストは未定)、翌16年の放映を予定していたものの、立ち消えてしまう。一説によると、劉慈欣が「ヒューゴー賞」を受賞したことを知った制作側は、あまりのプレッシャーに身動きが取れなくなったということだ。

SFミステリー小説「三体」映画ポスター

それよりも早く、実写映画化も進められていた。2014年に正式に制作発表された映画版は実際、翌15年3月~7月に撮影が行われている。その翌年の公開を目指し、制作側は膨大なポストプロダクションに追われ、2016年1月には映画版の公式ポスターも公開された。ところが同年6月に何の前触れもなく、突如として公開無期延期のニュースが伝えられた。しかも制作プロデューサーが人事異動で離職するという、なんとも不可解な展開だった。報道によると、お蔵入りを決定づけたのは『三体』の大ファンである政府の高官の鶴の一声で、実際に高官が試写に訪れた際の写真もネットに流出している。

今年2月、劉慈欣が2000年に執筆した短編小説『流浪地球』を改編した同名映画が春節(旧正月)映画の目玉として公開され、爆発的なヒットを記録した。最終の興行成績は46億5500万元(約730億円)に上り、中国の歴代興行収入の第2位に躍り出た。この映画の大ヒットにより、中国は国産SF映画のクオリティが一定レベルに達したという確信を得ると共に、観客が求めるハードルも一気に上がったのだ。こうなると、ますます待望の映画版『三体』が駄作、あるいはそこそこの作品に収まったのでは、国家の威信に関わるというわけだ。

一方、ハリウッドが『三体』の映画化に興味を持たないはずもなく、かのジェームズ・キャメロン監督も関心を示しているというが、こちらも実現は不可能なようだ。劉慈欣が「ハリウッドには撮らせない」と宣言しており、「ハリウッドのSF作品はストーリー、背景が複雑で紆余曲折なのは許されるが、テーマが複雑であることは許されず、白黒を明確にしなければならない。『三体』はこの基本的原則に反している」とその理由を挙げている。

かくして映像化は難航を極めているが、原作ファンはむしろ「良かった!」と胸をなでおろしている。映像化不可能な壮大なスケールと世界観、それこそが『三体』の最大の魅力だからだ。

『三体』が仕掛けた “万有引力”には、まだまだ続きがありそうだ。




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